日本で永住権申請するには│基本条件&必要な手続き

2022-05-28

日本で暮らし始めてしばらく経つなら、是非とも永住権申請を検討してみましょう。許可が下りれば、職業選択や選挙の投票が自由になり、家族の活動の幅も広がります。
申請人となる外国人が覚えておきたいことは、以下の通りです。

永住権とは

外国人が日本で暮らす場合、普通は在留期間や活動内容に制限を受けます。出入国管理及び難民認定法第22条の「永住許可」を取得すると、上記のような制限は全く受けません。
永住権(永住ビザ)とは、言わば「日本国籍を持つ人と全く同じように暮らす権利」です。

通常の在留資格との違い

在留外国人が持つビザ(査証)には、留学や特定の業種での就労とのように、活動内容に応じて種類があります。これらと永住ビザとの違いは、以下の表にまとめる通りです。

比較項目永住ビザその他のビザ
在留期間なし原則あり
活動内容自由ビザの種類による
資格外活動できる(副業もアルバイトも自由)別に許可が要る(許可を得ても活動時間等に制限あり)
選挙権なし(条例により認められる地域有り)基本的になし
再入国許可必要必要 
家族の入国・在留在留期間・就労共に制限なし在留期間や就労に制限あり

永住ビザのメリット

生活上の永住ビザのメリットは、大きく6つに分類できます。家族共々ライフプランの選択肢が一気に広がり、日本での暮らしを大いに充実させられるでしょう。
▼在留のための面倒なルールから解放される
その他の在留資格で暮らす場合、転職したり一時帰国したりする度に所定の手続きが必要です。日常生活でも、在留カード携帯の義務があり、カードを置いたまま外出しただけで罰金に処せられてしまいます。永住許可を得れば、上記のような面倒なルールはありません。

▼職業選択が自由になる
永住ビザの何よりのメリットは、就職先も働き方も自由になることです。
収入や経験のためにアルバイトしても構いません。自分で会社を立ち上げる場合も、一定額以上の資本金を準備する等、在留資格「経営管理」の要件をクリアする必要がなくなります。

▼お金が借りやすくなる
留学や就労のためのビザだと、国内でのローン審査はほとんど通りません。完済する前に帰国する可能性があると思われてしまうためです。
永住許可を得れば、収入や資産の基準さえ満たせば、住宅ローンでも事業融資でも自由に契約できます。

▼配偶者の就労制限がなくなる
配偶者を家族滞在ビザで呼び寄せた場合、原則として1週間に28時間以内しか働けません。より長時間働こうとすると、個別許可が必要です。
在留資格「永住者の配偶者等」なら、上記の制限は一切なくなり、転職も自由に行えます。

永住権の取得要件

日本で永住権を取得するには、まず法律上の要件をクリアしなければなりません。特に注意したいのは、原則在留10年以上の要件です。
ここで紹介する永住ビザ取得の要件は、政府のサイトでも確認できます。

参考:永住許可に関するガイドライン(出入国在留管理庁)
英語版:Guidelines for Permission for Permanent Residence

法律上の要件

法律で定められる永住権取得の要件は、大きく3つに分けられます。順に確認してみましょう。

素行が善良であること
第1の要件は、法律を遵守し、日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいることです。日頃から交通ルール等をしっかり守り、職場や近隣の人に迷惑をかけないよう生活しなければなりません。

独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
第2の要件は、日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれることです。簡単には、働くために必要な能力が備わっており、現に生活するための資産や収入があることと言えます。

その者の永住が日本国の利益に合すると認められること
第3の要件は、これまでの日本での生活を通して「国の利益に合する」と認められることです。より具体的に、以下の要件が定められています。

①原則10年以上の在留期間
うち5年間は、就労資格(技能実習および特定技能1号を除く)または居住資格での実績が求められます。オーバーステイ等の不法滞在歴は、申請要件と合致しません。

②前科がなく、公的義務を果たしていること
懲役刑や罰金刑を受けていると、永住権の取得はほとんど不可能です。前科がなくても、納税義務を果たし、地域の行政団体や出入国在留管理庁の指定する手続きをきちんとこなしていなければなりません。

③現に最長の在留期間が認められていること
在留資格の取得・更新では、これまでの経歴や能力に応じ、個別に在留期間の許可が下ります。永住権申請するには、その時点で持っている在留資格につき、法律で決められている最長期間が認められていなくてはなりません。

④公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと
ごく簡単に言えば、身の回りを清潔に保ち、危険な伝染病にかかっていない状態を指します。

原則10年在留の特例

原則10年以上在留していないと永住権申請できないとするルールには、一定の例外があります。より短期間しか日本で暮らしていない場合でも申請できるケースは、下の表に掲げる6つです。

申請人の状況永住許可申請が可能となる時期
日本人もしくは永住者と結婚している在留3年以上
在留資格「定住者」を持っている在留5年以上
難民に認定された在留5年以上
法定の活動で日本国に貢献している在留3年または5年以上
高度人材ポイント制で70点以上在留3年以上
高度人材ポイント制で80点以上在留1年以上

永住権申請の方法

日本の永住権を取得するには、今住んでいる場所を管轄する出入国在留管理官署へ、指定された書類を提出しなければなりません。書類の内容は、以下で簡単に紹介します。

出入国在留管理庁に提出する書類

申請人本人の必要書類は次の通りです。永住許可申請書と了解書は、政府のサイト(リンク)からPDFでダウンロードできます。

l 永住許可申請書
l 写真(縦4cm×横3cm)
l 在留カード(+資格外活動許可書)
l パスポートor在留資格証明書
l 職業を証明する書類(在職証明書等)
l 納税状況や所得を証明する資料
l 公的年金・公的医療保険の支払い状況を証明する資料
l 了解書

配偶者や子の必要書類
家族の在留資格も一緒に申請する場合は、それぞれ基本の提出物を用意し、以下の書類も追加で提出します。

▼身分関係が分かる書類
戸籍謄本、婚姻証明書、出生証明書等

▼家族全員分の住民票
住んでいる地域の役場で取得可

おわりに│永住権申請はプロに相談を

要件を満たして必要書類を全て準備できたとしても、必ず永住許可が下りるとは限りません。最終的な許可・不許可の判断は、出入国在留管理庁(正確には法務大臣)に委ねられています。より確実に手続きを進めるなら、行政書士や在留外国人の生活に詳しいプロの支援を受けなくてはなりません。

▼永住権申請で覚えておきたいこと
l 原則10年以上在留の要件がある
l 納税状況・保険料支払い・職業等、証明事項が多い
l 全ての要件をクリアして許可が下りると、日本人と同じように暮らせる