帰化して日本国籍を取得するための6つの条件

2022-06-04

外国人が日本で帰化する時は、法律で定められた条件を全てクリアしなければなりません。申請の基本ルールと共に、具体的にどんな状況なら国籍取得が認められるのか確認してみましょう。

▼帰化して日本国籍を取得できる条件
l 継続5年以上の居住実績
l 成人かつ十分な判断能力がある
l 素行善良と認められる
l 独立して生計を営める
l 二重国籍にならない(許可された時点で元の国籍を失う)
l 反社会勢力との関わり等がない

日本国籍取得(帰化)のルール

帰化とは、日本国籍を取得するための手続きであり、選挙権を含め日本国民としての権利が広く認められるようになる手続きです。申請して許可を得ると在留外国人に対する制限が全くなくなり、その分許可のルールも厳しく取り決められています。

国籍法第5条1項の要件を満たす

帰化申請を行えるのは、少なくとも国籍法第5条1項の要件を全て満たしている場合です。条文には、次のような定めがあります。

① 引き続き五年以上日本に住所を有すること。
② 十八歳以上で本国法によって行為能力を有すること。
③ 素行が善良であること。
④ 自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の資産又は技能によって生計を営むことができること。
⑤ 国籍を有せず、又は日本の国籍の取得によってその国籍を失うべきこと。
⑥ 日本国憲法施行の日以後において、日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て、若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入したことがないこと。

法務大臣の許可を得る

要件を満たしているからと言って、必ず帰化の認定があるとは限りません。審査官、正確には法務大臣に個別に認めてもらわなくてはなりません。
許可・不許可の判断は、提出する書類に基づいて行われます。必要書類は申請人ごとに違うため、管轄の法務局に問い合わせて確認しましょう。

帰化申請時に満たすべき要件の詳細

国籍法第5条1項の要件は、元から日本国籍を有する人を対象とする法令が絡み、理解が難しいと考えられます。以降で分かりやすく言い換えると共に、気を付けたいポイントも詳しく解説します。

継続5年以上の居住実績がある

帰化申請の第1の要件は、連続して5年以上に渡って適法に居住した実績です。「適法に」と言うように、居住中は何らかの在留資格が必要です。オーバーステイ等の不法滞在期間は含まれない点に注意しましょう。

成人かつ十分な判断能力がある

帰化申請の第2の要件は、日本の法律で成人と認められる年齢であり、かつ自分で契約その他の手続きを進める能力(=行為能力)を有していることです。

▼日本で成人と認められる年齢
18歳(2022年4月1日より前に帰化申請する場合は20歳)

▼行為能力があると認められる条件
l 未成年者でない
l 認知症等の診断を受けていない
l 成年後見人・保佐人・補助人の選任が開始されていない

素行善良と認められる

帰化申請の第3の要件である「素行善良」とは、犯罪歴は当然、資格外活動許可の制限を超えたアルバイト(オーバーワーク)等も一切なく、税もきちんと払えている状態を言います。
素行の評価には、誰でもあり得る道路交通法違反等も含まれます。もっと重大な傷害罪等の犯罪歴がある場合、少なくとも以下の要件を満たさないと、帰化申請は認められません。

▼刑務所に入った場合
執行猶予付きで刑を言い渡され、取り消されずに猶予期間を終えた(刑の消滅)

▼刑務所に入っていない場合
不起訴処分になった
もしくは、罰金以上の刑が確定することなく出所後10年経過した(刑の消滅)

▼罰金刑の場合
罰金を納めた後、は罰金以上の刑が確定することなく5年経過した(刑の消滅)

独立して生計を営める

帰化申請の第4の要件は、生活保護等に頼らずとも生活できるだけの収入です。審査は「世帯収入」に基づくため、結婚して夫婦共に働いている人なら、配偶者の収入を合算できます。
なお、収入の金額だけでなく安定性もチェック対象になるため、職業や雇用形態が分かる書類を求められる可能性があります。

帰化によって現在の国籍が失われる

帰化申請の第5の要件は、日本国籍の取得によって、より以前の国籍が失われることです。帰化希望者の出身国に多い中国や韓国では、各国の法律により、日本での帰化申請が認められると自動的に国籍離脱となります。

反社会勢力との関与等がない

帰化申請の第6の要件は、暴力団や政府を暴力で破壊しようとする団体との関わりがないことです。当然、自ら団体を結成したり、単独で企てたりする行為も認められません。
会社経営者や個人事業主の場合は、そうと知らずに誤って反社会勢力と取引してしまう可能性があります。心当たりがあれば、専門家と相談しながら申請に臨みましょう。

その他の許可・不許可に影響する要素

帰化の審査では、ここまで挙げた法律上の要件にこだわらず、日本で安定した生活を営めそうか多角的な判断が行われます。以下のポイントも注目されており、場合によっては不許可になってしまいます。

▼日本語能力が十分と言えるか
家族だけでなく、職場の他部署の人や近隣住民ともスムーズに意思疎通できるレベルが望ましいと考えられます。

▼1つの職場で長く働けているか
転職歴の数は、帰化許可申請で不利になる要素です。独立生計を営むための技能がきちんと磨かれておらず、職場に馴染めない何らかの理由もあると考えられるためです。

帰化申請のFAQ【期間と許可率】

最終的に日本国籍を取得できるかどうかは、審査官の判断に委ねられます。書類を提出すればすぐに審査が進むわけでもなく、一定の期間を見ておかなくてはなりません。
最後に、申請人となる外国人からよくある質問に答えます。

帰化申請が許可されるまでの期間は?

帰化が認められるまでの時間は、平均して1年から2年程度です。
結婚・起業・不動産購入のためのローン契約等の予定がある場合は、余裕を持って進めましょう。

帰化申請の許可率は?

帰化申請の直近の許可率は、2019年より毎年9割以上となっています(法務省の統計情報より)。掲げた条件を満たしており、しっかりと準備して臨めば、不許可のリスクを意識する必要はそれほどありません。

おわりに│日本での帰化申請は条件確認を丁寧に

帰化申請の審査は、今後日本国民として社会と調和しながら暮らせるよう慎重に進められます。国籍取得の条件はしっかり確認し、証明を求められた時にすぐ書類提出できるようにしておくことが大切です。