帰化の意味とは│外国人永住者との違い

日本での帰化(帰化許可申請)とは、外国人居住者ではなく日本人として活動できるよう、法務大臣に日本国籍を付与してもらう手続きです。永住権とは区別され、日常生活や渡航で大きな違いが生じます。

帰化者と外国人永住者との違い

継続して日本国内に居住できる点だけだと、帰化した人と外国人永住者との間に違いはありません。ただ、帰化者が「日本人」であるのに対し、永住者は依然として「日本で在留が認められた外国人」だとされます。
生活上実感する具体的な違いとしては、以下のようなものが挙げられます。

戸籍を持てる

日本人に対しては、住民登録制度のみならず、出生から死亡までの親族関係を証明する戸籍制度があります。外国人が戸籍制度を利用できるのは、帰化許可が下りた場合のみです。
戸籍の役割は様々で、そのひとつとして公的年金および保険金の請求権者の確定が挙げられます。他には、日本の相続法に基づき、死亡した際にその遺産の取得権者(=法定相続人)を明確化する効果もあります。

参政権がある

日本の国政選挙で投票あるいは立候補する権利は、日本国籍を持つ人しか得られません。帰化すれば上記要件は満たせます。
地方選挙だと「外国人定住者でも投票できる」とする条例のある地域が増えていますが、未だ立候補は難しいのが現状です。より積極的に政治に参加したい場合は、永住者ではなく帰化者とならざるを得ません。

日本のパスポートを取得できる

2022年の時点で、日本のパスポートがあると192か国にビザなしで渡航できます(ヘンリー&パートナーズ社の調査結果より)。アメリカや中国といった主要国を大きく上回り、世界で最も渡航しやすい種類とされています。
帰化許可が下りてパスポート取得まで済ませれば、国内での生活のみならず、旅行や出張の利便性も向上します。

就職や取引で日本人として扱われる

外国人永住者等の「在留が認められた外国人」の立場だと、ビジネスで不都合が生じがちです。居住資格でないと活動内容に制限を受け、在留資格の更新・変更等の手続きの度に本業に支障が出るかもしれません。
帰化申請後に日本人としての扱いを受けられるようになると、上記のような心配は一切なくなります。

帰化申請の注意点

帰化するかどうか決める時は、1人ひとりの状況を改めて確認しましょう。もっとも注意したいのは、手続きが複雑かつ長期化する点です。

帰化申請の手続き期間と必要書類

帰化するための書類は個別に異なり、許可が下りるまで書類提出後1年程度の期間を要します。審査中にも面接の呼び出しがある等、対応で戸惑うことが多いでしょう。

【参考】韓国籍(特別永住者等)の会社員が申請する場合の必要書類

申請書類一式帰化許可申請書、帰化の動機書、履歴書、宣誓書等
外国人にかかる証明書類特別永住者証明書、戸籍謄本、出生届の記載事項証明書等
本国が交付する書類基本証明書、婚姻関係証明書、家族関係証明書、入養関係証明書等
公的義務関係の証明書類国税および地方税の納税証明書、各種保険料の領収書
資産状況等の証明書類源泉徴収票、給与明細、確定申告書在職証明書等
その他の書類家系図、担当医が作成した診断書等

二重国籍は不可【本国で外国人として扱われる】

日本では二重国籍が認められておらず、帰化する際は本国の国籍から離脱しなければなりません。つまり、許可が下りた時点で、本国政府から見て外国人扱いとなります。あらためて入国しようとすると、国ごとに指定された入国及び在留関係の手続きを踏まなくてはなりません。
以上の点から、今後も頻繁に帰国する可能性のある人は、帰化ではなく永住権の申請の方が有利と考えられます。

おわりに│日本でずっと暮らすつもりなら「帰化許可申請」を

帰化で日本国籍を取得すると、就職・相続・保険金請求とあらゆる場面で有利になります。日本人に対してビザ不要で入国を認める国が多い点から、本邦に拠点を持ちつつ渡航する機会の多い人にもおすすめできます。
残る問題は、帰化申請の手続きの煩雑さです。また、審査に通過するには一定の条件があり、必要書類で条件との合致をきちんと証明しなくてはなりません。実際に帰化を進める際は、出来るだけ本邦の手続きの事情に詳しい人のサポートを受けるべきです。