日本の帰化申請の基本│許可の要件・必要書類・手続きの流れ

2022-05-28


継続5年以上の在留期間があれば、帰化して日本国籍を取得できます。手続き自体は無料ですが、提出資料が極めて多く、申請から1年以上の時間がかかる点に要注意です

日本で帰化するための基礎知識

日本で帰化するには、国籍法で定められる要件をクリアし、これまでの在留状況を中心に法務局に審査してもらう必要があります。帰化の手続き(帰化許可申請)の基本は以下の通りです。

法律上の要件を満たす

帰化許可申請のための法律上の要件は、以下の6つに整理されています。申請時は国内外から資料を取り寄せ、許可・不許可の判断基準となる在留状況を証明しなくてはなりません。

▼住所条件(国籍法第5条第1項第1号)
在留資格を持ち、適法に継続して5年以上居住している

▼能力条件(国籍法第5条第1項第2号)
日本の法律で成年年齢とされる18歳以上(※2022年4月1日以降の申請分)で、自分で法律行為ができる健康な判断能力がある

▼素行条件(国籍法第5条第1項第3号)
犯罪歴がなく、税や社会保険料を完納し、その他の素行も社会通念上良好と言える

▼生計条件(国籍法第5条第1項第4号)
生活保護等を受給することなく、配偶者等の親族と協力しながら独力で生計を立てられる資産や技能がある

▼重国籍防止条件(国籍法第5条第1項第5号)
帰化で日本国籍を得た場合に、原則として以前の国籍を喪失する

▼憲法遵守条件(国籍法第5条第1項第6号)
反社会勢力と関わる、日本政府を暴力で破壊しようと企てる等の行動が見られない

許可・不許可は審査しだい

法律上の要件に該当するかどうかは、あくまでも法務局担当者の判断に委ねられています。帰化申請人を取り巻く状況を総合的に判断し、日本でこれからも安定的に暮らせると個別に結論付けられる時に、許可が下りる仕組みです。

【例1】配偶者の住所要件について
法律上は継続5年以上の居住が条件とさだめられていますが、配偶者に関しては、3年程度しか居住していない場合でも許可される場合があります。

【例2】税や社会保険料の納付状況について
基本的に滞納は認められませんが、帰化申請までに完納できていれば、他の要素から「帰化申請を許可できる」と判断してもらえる可能性大と言えます。

申請手数料について

帰化許可申請手数料は無料ですが、提出書類を集める時にそれぞれ一定の交付手数料がかかります。トータルでかかる費用は、2人までの同時申請なら数千円程度です。
参考までに、国籍を変えずに定住できる「永住許可申請」だと、申請手数料のみで8千円かかります。

帰化申請時の必要書類

帰化申請時の必要書類は、手元にある在留カードから本国発行の親族関係書類まで、実に多岐に渡ります。また、統一された提出資料のリストは存在しません。

事前相談で個別に指定される

帰化の許可は1人ひとりの事情の総合的判断となるため、着目すべき事情・要素は全て資料の提出が必要です。そのため、申請人には法務局への事前相談を促し、そこで状況をヒアリングして提出物を案内する運用が採られています。
なお、行政書士その他の民間の帰化支援機関に相談しても、ある程度まで正確に何が必要か教えてもらえます。

基本の提出書類

以下はあくまでも一例ですが、帰化申請時の提出書類です。

▼必須提出物
l 申請書類一式(法務局指定のもの)
l 在留カードおよびパスポート
l 戸籍謄本(全部事項証明書)
l 外国人登録原票記載時公証明書
l 出生届の記載事項証明書

▼本国から取り寄せる資料
l 国籍証明書
l 家族関係証明書(中国なら各種公証書、韓国なら入養関係証明書等)
l 国籍離脱の領事証明

▼日本国内で用意できる資料※
l 資産状況の証明書(預金残高証明書等)
l 在勤証明書、在職証明書
l 源泉徴収票、確定申告書
l 前年度の納税証明書

※会社経営者や個人事業主の場合、さらに事業や営業許可について証明する資料が必要です。

手続きの流れ

帰化申請の手続きは、概ね以下の流れで進みます。全体で1年以上かかることが多く、特に申請前の段階でスムーズかつ不備のないよう書類を揃えられるかどうかが問題です。

①事前相談(計2回~3回)

②申請書類の提出

③面接(②から2~3か月後/当日は1時間程度)

④審査(③から8~10か月)

⑤許可の結果連絡

おわりに│帰化許可申請は人によって対策が変わる

日本での帰化申請は、在留状況の他に家族構成等、申請人にかかるあらゆる状況が審査されます。大前提として継続5年以上の在留条件をクリアし、素行要件や継続安定的に働いて収入を得る点を意識しておけば、時間はかかるものの許可されると考えられます。
より短期間で確実に帰化できるよう、法務省の他に行政書士その他の民間の支援機関と相談しておくと安心です。