日本の永住権を取得するための条件とは?│素行善良・独立生計・国益要件の解説

2022-05-28

日本で永住権(永住ビザ)がもらえるのは、素行善良かつ独立して生計を営めており、税金をきちんと納める等の公的義務を果たしている人です。申請ガイドラインにある内容に基づき、どんな人なら永住を認めてもらえそうか確認してみましょう。

永住権取得の最低条件

日本の永住権を取得するには、入管法で定められる条件を最低限クリアしなければなりません。条文に何と書かれているのか確認してみましょう。

“前項の申請があった場合には、法務大臣は、その者が次の各号に適合し、かつ、その者の永住が日本国の利益に合すると認めたときに限り、これを許可することができる。ただし、その者が日本人、永住許可を受けている者又は特別永住者の配偶者又は子である場合においては、次の各号に適合することを要しない。

  1. 素行が善良であること。
  2. 独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。”

規定の意味や具体的な条件については、以下のように永住許可に関するガイドライン(リンク)でさらに詳しく説明されています。

原則10年以上引き続き在留していること

永住許可申請が出来るようになる時期は、日本国内で続けて在留した年数が10年に達した時です。うち5年間は、就労資格(一部を除く)または居住資格を得た上での実績でなければなりません。
ただし、一定の条件に当てはまる場合、最短で在留1年目から申請できるようになります。

その他の法律上の要件を満たすこと

永住許可の申請人である外国人に対しては、在留実績を含め、以下の法律上の要件を全て満たすよう求められます。

▼素行善良要件
法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。
※日本人・永住者・特別永住者の配偶者または子は、本要件を満たさなくても申請できます。

▼独立生計要件
日常生活において公共の負担にならず,その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。
※日本人・永住者・特別永住者の配偶者と子に加え、難民の認定を受けている人は、本要件を満たさなくても申請できます。

▼国益要件
l 原則10年以上の在留実績
l 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと
l 公的義務を適正に履行していること
l 現に有する在留資格につき、最長の在留期間を得ていること
l 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと

提出書類を揃えられること

実際に永住許可の申請を行う場合、要件に合致していると証明できるよう、指定された書類を全て提出しなければなりません。提出物の中には、収入や貯金を示すものや、税を完納していることを示すものが含まれます。
勤めている会社にも協力してもらい、職業証明になる書類も用意しましょう。

永住の許可・不許可に影響する要素

実際に日本で永住権(永住ビザ)がとれる条件には、さらに細かい規定があります。申請人として気になるポイントを5つ挙げ、それぞれルールを厳密に解説します。

永住権申請できる在留資格の種類は?

これまでの本邦滞在で得た在留資格については、10年間のうち就労資格または居住資格で5年以上とする要件に注意しましょう。現在取得できる就労・居住資格のうち、永住許可申請の許可の要件に当てはまるのは以下のものです。

▼入管法別表第1の1の在留資格(就労資格)
外交、公用、教授、芸術、宗教、報道

▼入管法別表第1の2の在留資格(就労資格)
高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能
※「特定技能」と「技能実習」は対象外

▼入管法別表第1の5の在留資格
特定活動

▼入管法別表第2の在留資格(居住資格)
日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者

在留10年未満でも永住権申請できる場合とは?

在留資格あるいは活動状況によっては、在留実績が10年未満でも永住許可申請に対応してもらえます。日本が受け入れを進める「高度人材外国人」に当てはまる人は、特に優秀だと在留1年目で申請できます。

▼「原則10年以上」から「5年以上」に短縮されるケース
l 在留資格「定住者」で5年以上の在留実績あり
l 難民に認定されて5年以上の在留実績あり
l 70点以上の「高度人材外国人」として、高度専門職または特定活動の在留資格を得た
l 申請3年前の時点で高度人材ポイント制の計算をした結果、70点以上獲得できた
l 外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる※

▼「原則10年以上」から「3年以上」に短縮されるケース
l 永住許可申請をする前に、日本人もしくは永住者および特別永住者と結婚した
l 70点以上の「高度人材外国人」として、高度専門職または特定活動の在留資格を得た
l 申請3年前の時点で高度人材ポイント制の計算をした結果、70点以上獲得できた
l 外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献があると認められる
l 地域再生法基づき認定された地域再生計画において明示された計画区域内に所在する公私の機関において、平成2年法務省告示第131号(リンク)第36号または第37号のいずれかに該当する活動を行っている

▼「原則10年以上」から「1年以上」に短縮されるケース
l日本人もしくは永住者および特別永住者の実子である(養子は対象外)
l80点以上の「高度人材外国人」として、高度専門職または特定活動の在留資格を得た
l 申請1年前の時点で高度人材ポイント制の計算をした結果、80点以上獲得できた

新婚生活中や離婚後でも早期申請できる?

在留3年目からでも永住許可申請できるとする日本人等との結婚の要件は、厳密に言うと、配偶者や子との家庭生活が一定期間以上続いていなければなりません。別居していたり、もしくは既に離婚が成立していたりする場合は、不許可になる可能性があります。

▼在留実績の短縮要件
l 日本人等の配偶者との結婚生活が3年以上続いている
l 子をもうけた場合、その子も1年以上継続して在留している

法律違反やトラブル経験があると不許可になる?

法律違反で罪に問われた経験がある場合、永住許可は基本的におりません。たとえ刑罰に処されていなくとも、交通マナー等を破ってトラブルになった経験があると、審査で不利になります。

l 懲役、禁錮または罰金に処されてから5年以内
l 罰金以上の刑につき、執行の終わりもしくは免除を得てから10年以内
l 罰金以下の刑につき、執行の終わりもしくは免除を得てから5年以内
l 少年法による保護処分が現在も継続している
l 違法行為又は風紀を乱す行為を繰り返し行なう等、素行善良と見られない特段の事情がある

他に不利になる要素として、制限時間を超えて資格外活動(アルバイトやパート)をした経験が挙げられます。その他、オーバーステイや不法就労のあっせん等に関しても、永住不許可になる可能性大です。

貯金・収入はどのくらい必要?

独立生計要件と紹介した資産状況について、貯金・収入の金額は特に指定されていません。最低限、生活保護を受給せずに暮らせているなら、許可の対象になると考えられます。
また、審査は「世帯収入」に基づいて行われます。申請人である外国人の収入が少なくても、配偶者の労働で生活できるようなら、独立生計要件を満たせると言えます。

果たすべき公的義務とは?

国益要件にある「公的義務」は、税と社会保険料の支払い義務を言います。所得税、住民性、国民年金、厚生年金、健康保険料等をきちんと納めていなければ、永住許可の要件は満たせません。

社会保険料の納付要件は、2019年5月31日のガイドライン改正で新たに加わりました。もっと注意したいのは、同時に各種納付義務を「適正に」履行しなければならないともされた点です。
つまり、各種支払いを出来るだけ期限までに済ませ、かつ、完納できていなければ、永住許可は基本的に下りないと考えられます。申請時点で未払いかつ期限の到来していない請求分については、専門家と一緒にどうするか検討しなければなりません。

おわりに│日本の永住許可を確実に得るには

日本で永住権(永住ビザ)を取得するには、下記4つの要件を満たさなくてはなりません。うち在留実績の要件については、現在の在留資格その他の状況に応じ、もっと短期間で申請を始められる場合もあります。

l 原則10年以上の在留実績がある(うち5年は就労資格か居住資格によるもの)
l 違反歴等がなく、素行善良と認められる
l 生活保護等の支援を受けず、独立して安定した生計を営める資産・技能がある
l 納税義務をきちんと果たす等、日本国の利益に合すると認められる

最終的に許可と不許可のどちらになるか、それは出入国在留管理庁の担当者しだいです。不安がある時は専門家に相談し、理由書を作る等の適切な対応が必要です。